ぱからん、はからん

ものつくりの、ものかき。

美味しくなる瞬間まで待ってみる

寝かせる。

 

料理には、寝かせるという行程がある。

アイディアも寝かせるといいらしい。

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ショートブレッドの焼き上がりは、とっても柔らかい。

だから、まず移動する前に冷まさなきゃいけない。

そして、クッキングペーパーの上だとふにゃふにゃになるので、

キッチンペーパーの上にのせてさらに冷ます。

 

そして、

タッパーの中で寝かせる。

 

これがつらい。

もう目の前にはショートブレッドがあるのに、

「中力粉を使う場合は、焼いたあと寝かせた方が美味しいです」

と書いてある。

一個食べてみると、すこし粉っぽい。

前回のプレーンショートブレッドをつくったときの

「やっぱり寝かせた方が美味しかった」

を信じて、

 

(三つくらい食べてしまったけれど)

 

一晩、寝かせた。

 

たしかに翌日美味しくなっている。

そうして毎日ちょこちょこ食べていく。

 

外山滋比古さんの、著書『思考の整理学』では、

アイディアを寝かせる話が書いてある。

(手元に本がないので引用ではありません)

 

ノートにとりあえずアイディアを書き留めておいて、

あとから振り返ってみて見る。

冷静になってから、面白いものがあったら拾ってみる。

人にはそれぞれのアイディアが熟成するスパンがある、と言う。

 

二年前の作品で、思考のプロセスを研究にしたことがある。

そして「熟成」というその話を検証してみようと、

作品をつくり終わったあとに、そのプロセスをマッピングした。

どの段階で苦しんで、

どこで何がきっかけで次に進んだのか。

 

不思議なことは、

雲のように所在があやふやなアイディアの点が、線で繋がるとき

それはたいてい何か大きな出来事が起こった訳ではなく、

「ふと」という言葉がぴったりな、

デザインとは関係ないことをしている瞬間だった。

 

そして、そのマッピングの結果、

ほぼぴったり一ヶ月スパンで「ふと何か」が起こったことが分かった。

 

「デザインから離れたから、思考がリラックスして繋がった」

こともあるだろう。

でも、その他のタイミングでも視界に入っていたであろうことが、

違う瞬間ではジャンプのきっかけになっていた。

 

これが「熟成」なのかもしれない。

 

その時が来るまで、動かなかったことが、

ある瞬間に点が急に繋がって、意味が分かって、

「一つのつながり」として動き出す。

 

スティーブ・ジョブスも言っているように、

点と点が繋がっていたことが分かるのは、あとから見たときであって、

最初から分かっていたものじゃない。

 

ショートブレッドから、アイディアの話へ。

 

きっと、バターが小麦粉が、砂糖が

点で存在していたものが

じわじわと繋がって、

「美味しいショートブレッド

として、熟成するのかもしれない。

 

じれったいけれど、

うずうずするけれど、

少し寝かせてみて、

あるときに美味しくなる瞬間を、

ちゃんと頂こう。

 

 

あなたは何を寝かせてみますか?